最近、不意にオートバイで旅をしていた頃を思い出すことがある。
自転車とは違った高揚感。
それに独りであるはずの旅が、何故か独りではないような。
彼の感覚が頭の隅をよぎるのだ。
旅を求めているのか、オートバイに乗りたいのか、
それとも、その両方なのか？
そんな事を考えながら、MTBで丘を走ると、
つい先日まで雪の残っていた畑が、
嘘のように緑をたたえているのに気が付く。
日中の気温は３０度を超え、真夏様に肌を焼く。
変わる景色に視界を踊らせながら、
心は内へと向かってゆく。
陽が傾く時間になると、
嘘のように清々しい風が周囲を走り、
湿度の少ない、それでいてどことなく寂しさを感じるような空気が、
だんだんと視界を満たしている。
遠くで走り去るオートバイの排気音が聞こえた。
彼は今夜、どこで荷を解くのだろうか？
