人気のない静かな海岸線を走っていると
そこには朽ちかけた古い桟橋がある
かつて護岸工事に使われたであろう鉄筋の桟橋は
今ではあちこちが錆びついており
一部の足場がすっぽりと抜け落ちている
時折、気まぐれな釣り人たちが利用する以外は
今では役目を終えたそれは
失ったその意味を
別の何かに置き換えて佇んでいた
夕日が秋の空を染め
海も空の色に光り輝く時間
私はその場で自転車に乗り
橋の先端を見つめて立っている
砂浜から海に向かう小さなカタパルトのように
すっと伸びた橋の先端は
まるでそこから空に飛び出せるのではないかと
他愛のない想像を膨らませるきっかけとなった
もちろん 飛び出せるわけはないのだが
そんな馬鹿な想像を楽しむことは
刻々と変わり行く時間の狭間の中で許された
小さな夢のような物なのかもしれないと
暗闇に溶け込んでゆく
橋の先端を見つめて思うのだ